悩んでいる人
こんな方にオススメの記事です。
この記事のもくじ
はじめに
こんにちは、Hikaruです。
今回は金管楽器プレイヤーであれば切っても切れない「マウスピースのバズィング練習」についての記事となります。
バズィングは「buzz(バズ)」という英語由来の言葉で、「虫の羽音」や「ざわめき」という意味を持ちます。唇を震わせる練習なので、「buzzing(バズィング)」と言うんですね。
バズィング練習は金管楽器においてはマウスピースのみで音を出す練習のことで、一番最初に金管楽器を始めた人はこのバズィング練習から始めたという人も多いのではないでしょうか。
バズィングは非常に繊細な練習方法で、練習の仕方を間違えると上達の妨げになったり、既にある程度吹ける人が調子を崩す原因にもなります。
なので今回は調子を崩さないように、バズィング練習と上手く付き合っていく方法について解説していきます。
バズィング練習の意味
バズィング練習には大きく以下三つの意味があります。
- 演奏前の唇のマッサージ
- 疲労した唇の休憩やマッサージ
- ソルフェージュの追求
私自身も練習していて唇が疲れたなーと感じた時に、マウスピースも何も付けていない状態で「ブルブル」と唇を震わせたり、指で直接マッサージをしたりしています。
このように唇周辺の血流をもとに戻して、リラックスさせようとします。そういう意味では一定のマッサージ効果はあると思います。
バズィング練習がソルフェージュ力を高めるワケ
金管楽器はマウスピースで生まれた振動が楽器本体を共鳴させ、最終的にベルから音が出てくる仕組みの楽器です。
つまりマウスピースで振動が生まれなければ、そもそも音が出ないことになります。マウスピースの音は金管楽器にとっては音の源になるわけです。
また現代の金管楽器はピストンやロータリーバルブが搭載されているので、ある程度バズィングの精度が甘くても指で音程を変えることが可能です。発明は偉大ですね。
しかし指だけで音を変えてしまうと、唇に多少なりとも負担がかかります。
初心者やハイノートが苦手な方で、ドレミファソ・・・と上がりたいのに、ドレミファド↓のように倍音が上がりきらずに音が下がってしまう方がいらっしゃいます。
これは唇でドレミファソの振動を作れず、ドレミやドレの振動までしか生み出せていないので、ソまで上がりきれないのが理由です。
チューニングB♭を演奏する時はチューニングB♭の状態で、Cを演奏する時はCの状態で演奏するようにしないと、唇で無理矢理音を上下させてしまうことになり、バテの原因や音域向上の妨げになります。
なので私たちはマウスピースバズィングやコンコーネで正しい音程を覚えたり、マウスピースで生み出す練習をしたりすることで、楽器を付けた時により楽に演奏できるようにする方が良いのです。
マウスピースバズィングの落とし穴
ここまで読んで頂ければ、マウスピースで生まれた振動が楽器の音になることを理解して頂けたかと思います。
と、思いたいところですが、ここでマウスピースバズィングの落とし穴を知っておく必要があります。
ここで皆さんにお聞きしたいのですが、マウスピースだけでバズィングするのと、楽器に着けた状態でバズィングするの、どちらがやりやすいですか?
恐らくほとんどの方は楽器に着けた状態の方が音が出やすいのではないかと思います。この理由を解説していきます。
抵抗感の違い
マウスピースだけで演奏した時と、楽器に着けた時の一番の違いは抵抗感です。
抵抗感は唇とマウスピースの間で主に生まれるもので、楽器の構造や重量によって大きく変化します。基本的にこの抵抗感がないと金管楽器は音が出ません。
目の前にある重い物を手で押してみる場面を想像してみましょう。靴底がすり減った靴を履いて、しかも足元がサラサラの砂の場所だったら踏ん張ることができなくて上手く物を押せませんよね?
ですがちゃんとした靴を履いて足元がしっかり固ければ、物に体重を乗せて押すことができますよね。抵抗感は一種の踏ん張りのようなものです。
楽器に当てはめると以下のようになります。
・しっかりとした靴底、固い地面=抵抗感
・物を押す腕=息
・押される物=マウスピース or 楽器本体
・物が動くときに発生するエネルギー=振動、楽器から出る音
なんとなくイメージできたでしょうか?
ではマウスピースだけの演奏とマウスピースを楽器に着けての演奏を考えてみましょう。
マウスピースはスタンダードなモデルでおおよそ90グラム程度、金管楽器本体は楽器によって1キロ~10キロありますから、その重量差は歴然です。
皆さんは物が重い物を押すのと、軽い物を押すのでは、どちらの方がより大きなエネルギーが発生すると思いますか?
当然答えは、重い物を押す時です。
・しっかりとした靴底、固い地面、重い物=抵抗感
・物を押す腕=息
・押される物=マウスピース or 楽器本体 <<<ここの違いが、抵抗感の違いにつながる!!
・物が動くときに発生するエネルギー=振動、楽器から出る音
そして上に当てはめて考えると、以下のようになります。
・重い物を押す時=抵抗感が強い=マウスピースに楽器本体を着けて演奏する方が踏ん張りがきくので、音が出しやすい(=唇とマウスピースの間で振動が生まれやすい)
・軽い物を押す時=抵抗感が弱い=マウスピースのみでバズィングする時は踏ん張りがきかないので、音が出にくい(=唇とマウスピースの間で振動が生まれにくい)
また抵抗感は物体の長さや曲がり方によっても変わり、短い物体かつ真っすぐな物体ほど抵抗感は少なくなります。
マウスピースは息が直線にしか入りませんから、楽器のように曲がりくねった物に比べて遥かに抵抗感は少なくなります。これもマウスピースバズィングが難しい理由の一つです。
毒になるマウスピースバズィングの例
ここまでで解説したように、そもそもマウスピースバズィングは音が出しにくい練習になります。
マウスピースバズィングでちゃんとした音を出したいために、無理矢理唇で振動を作ろうとしている方が多く見られます。
- マウスピースを必要以上に唇に押し付けて音を出そうとする。
- 息を思いっきり吹き込んで振動を作ろうとする。
- 唇を無理矢理閉じて音を出そうとする。
このような練習は楽器を着けた時と明らかに吹き方がズレてしまいますので上達にはつながりませんし、無理矢理音を出そうとすることで余計なクセを付けてしまう可能性もあります。
特に初心者は息の使い方が分からないと思いますので、いきなりマウスピースバズィングを練習させるのは逆効果になる可能性が高いので、指導者は注意深く観察した方が良いでしょう。
薬になるマウスピースバズィングの仕方
とは言え、マウスピースバズィング自体は練習方法を見誤らなければ、上の方でも書いたようにソルフェージュ力やスタミナの向上など、素晴らしい効果を発揮できます。
マウスピースバズィングで一番大事なのは、無理矢理音を出さないことです。
金管楽器プレイヤーにとって一番大事なのは、どんな息であっても反応する唇を作っていくことにあると私は考えています。
優しい息に反応するように練習すれば素晴らしいピアニッシモを表現できるようになりますし、しっかりとした息に反応するように練習すれば、迫力のあるフォルテッシモを表現できるようになります。
そしてマウスピースバズィングで自然に音を出すためには、良い意味でプレーンな息をマウスピースを流してあげることが大事です。
- 自然に優しい息をマウスピースへ流してあげる。
- 音が出なくても無理矢理に音を出そうとしない。
- 自然な状態で音が出るようになったら、ソルフェージュの練習をする。
まとめ
マウスピースバズィングは初心者からトッププロまで様々な意見がある練習です。
トッププレイヤーの中でもバズィングは必要ないという方もいれば、バズィングは絶対に必要だという方で大きく分かれます。
どちらも正解であり、要はマウスピースバズィングをどのような目的で練習するのかが大事なのです。
私自身はあまりマウスピースバズィングをせず、必ずしも必要ではないと考えているので他人に押し付けることはしませんが、もしその人が本人にとって必要だと判断したなら、練習の危険性と効果の両方を説明するようにしています。
皆さんもただ盲目的に練習するのではなく、「なぜこの練習が必要で、どんな効果があるのか」を考えながら楽器と向き合っていくと、より楽器が楽しくなっていくと思います。
今回はここまで、それではまた!