悩んでいる人
こんな方にオススメの記事です。
この記事のもくじ
はじめに
こんにちは、Hikaruです。
以前の記事で、私はバルブオイルに関して以下のようなことを書きました。
・バルブオイルは販売しているそれぞれの会社が、ピストンの動作だけでなく音響的な面も考慮して開発をしています。

意外と意識しないかもしれませんが、バルブオイルはメーカーによって音色や吹奏感がはっきり変わります。
ですがバルブオイルによってどのような音色や吹奏感の違いがあるのかを知っている方は多くはないと個人的に思っております。私自身も多くのバルブオイルを試した結果、各バルブオイルの違いや特性を知り、今のものにたどり着くことができまいた。
しかし、そこまでに至るにはお金も時間もかかりますし、音を聞き分けるための耳を鍛えることも必要になります。
そこで今回の記事ではバルブオイルの音色や吹奏感の違いを皆さんに紹介し、バルブオイル選びの参考にしてもらえるよう、実際に演奏した動画も載せていきます。
楽器やマウスピースである程度自分好みの音色に近付くことができたけれども、あと一歩足りないという方は、バルブオイルを変えてみると自分の理想に更に近付くことができると思います。
また演奏会でどのような音が欲しいかによって、バルブオイルを使い分けることもできるようになるでしょう。
ちなみに今回はタイトルの通り「超個人的」な感想・レビューになりますので、非常に主観的な内容になりますので、ご承知おきください。
石油由来と化学由来のオイルの違い(豆知識)
ざっくりですが、石油由来と化学由来のオイルのメリットとデメリットについて先に解説しておきます。
ここから先の各オイルの解説をより深く知るのに役立ちますので、ぜひ一度目を通してみてください。
・メリット:パチパチとはまるようなピストンワークで、高速のアドリブソロなどに向く。
・デメリット:蒸発しやすく、気温が高いと一日に数度注油が必要になるケースもある。
・メリット:蒸発しにくいため、一度の注油で長時間の演奏が可能。防サビ成分を含んでいるので、楽器の寿命を延ばせる。
・デメリット:石油系に比べると、防サビ成分の量によってはピストンワークが重くなる場合がある。防サビ成分の影響で、ゴミが内部に溜まりやすい。
各バルブオイルの紹介
使用楽器:クイーンブラス、ゾロトランペットCustom Biult ModelⅡ
主管グリス:トロンバ製
マウスピース:オリジナル(ハグストロムモデルベース、マウントバーノンバックボア)
条件:各オイルの使用前に古いオイルを落とし、ピストン・ケーシング・各抜き差し管を洗浄。
- PDQ
- ヤマハ(スーパーライト)
- ヤマハ(ライト)
- ヤマハ(レギュラー)
- ヤマハ(ビンテージ)
- ヘットマン(ライトピストン)
- ヘットマン(ピストン)
- ヘットマン(クラシックピストン)
- トロンバT2
①PDQ
マウスピースやアンブシュア矯正器具なども出しているワーバートン社製、PDQオイルです。
石油由来のバルブオイルで、エリック・ミヤシロ氏を始め多くのプレイヤーが愛用しています。
粘度は軽めで、石油から製造されているため不純物が少なく、ピストンの動きはかなりスムーズ。パチパチとした軽快なピストンワークが実現できます。
楽器の持つ音色を引き出してくれる、といった感じの使用感で、音色は輝かしいと表現出来ます。明るい音色が好きな方にはストライクなオイルです。
使用した時の抵抗感も少なめで、オープンな吹奏感になりますが、粘度が軽いオイルの特性上、音の輪郭はやや丸い音色になります。
欠点として石油成分が強いために揮発しやすく、夏場は追加の注油が必要な場合があります。また臭いに独特の油臭さがあるので、苦手な方は注意が必要です。
しかしそれを補って余りあるポテンシャルを持ったバルブオイルで、私自身多くのバルブオイルを試した結果、PDQに落ち着きました。
①PDQ pic.twitter.com/M7paYh6SzM
— Hikaru (@Hikaru_tpiano) August 22, 2020
②ヤマハ(スーパーライト)
言わずと知れた我らがヤマハ、その中でも最も粘度が軽くされているバルブオイルです。
ヤマハ製のバルブオイルは全てが化学合成により製作されており、PDQの石油系とは全く異なるタッチレスポンスです。
化学系のオイルは基本的に石油系ほどのスピード感は実現できませんが、このスーパーライトは防サビ成分を極限まで減らしているため、オイルの持続性と軽快なピストンワークの両方を兼ね備えています持続性のある石油由来オイル、と言ったイメージです。
ただし防サビ成分が少ないため、注油して長期間放置したままにしてしまうとピストンが錆びてしまう可能性がありますので、取り扱いにはご注意ください。
非常にオープンな音色と息を入れれば音が出るほどの軽い吹奏感で、ドバーッとベルから前方へ一直線に音が飛んでいく印象があります。ギラッと突き抜けるような音が欲しいプレイヤーの方は、スタイルによってPDQとヤマハスーパーライトを選んでみると良いでしょう。
②ヤマハ(スーパーライト) pic.twitter.com/N19PlVTDap
— Hikaru (@Hikaru_tpiano) August 22, 2020
③ヤマハ(ライト)
スーパーライトよりも一段階粘度が高くなったバルブオイルです。
とは言えまだまだ粘度が低いサラサラタイプのオイルなので、新しい楽器に使用することが望ましいでしょう。
スーパーライト同様オープンな吹奏感ですが、音にまとまりが出てきて輪郭もはっきりしてきますので、吹奏楽などの大編成であってもしっかりと存在感を示すことができるように感じました。
音色はスーパーライトほどではありませんが明るめで、抵抗感も少ないので息抜けがとても良いオイルです。
③ヤマハ(ライト) pic.twitter.com/sv82Z6W0fH
— Hikaru (@Hikaru_tpiano) August 22, 2020
④ヤマハ(レギュラー)
ライトよりも更に一段階粘度が高くなったオイルで、ヤマハの中でも最もポピュラーなものになります。楽器を購入した時の付属品としてもよく見かけるオイルです。
粘度は中くらいからやや軽めに相当するオイルで、新品から中古、どの楽器にも万能に使っていけるタイプです。音色は明るすぎず暗すぎず、ニュートラルなやや落ち着いた感じになります。
この辺りまで来るとスーパーライトとの違いが明確になり(個人的にはそう感じます)、ライトまでにはなかった音の厚みが出てくるようになります。
抵抗感がしっかりと感じられるようになるので、大音量であってもしっかりと楽器が受け止めてくれるようになります。
ライトまでは霧状に近かった音が、固体のような形を伴って飛んでいくような印象です。抵抗感も丁度良いので、初心者の方であっても使いやすいオイルだと感じました。
④ヤマハ(レギュラー) pic.twitter.com/NZvkOxJjGi
— Hikaru (@Hikaru_tpiano) August 22, 2020
⑤ヤマハ(ビンテージ)
ヤマハのバルブオイルとしては最後のご紹介になります。最も高い粘度を持つビンテージオイルです。
ピストンとケーシングの隙間(クリアランス)が広がった古い楽器向けのオイルになります。もちろん比較的新しい楽器にも使用可能です。
粘度が高いオイルの音色は総じて密度があり、抵抗感が強くなるので圧力がかかったような音になります。このヤマハビンテージもその例に漏れません。
壁が迫ってくるような音、と表現できる立体感のある音が重たい楽器やこのオイルのような粘度が高いオイルの特徴で、クラシックやオーケストラで打ち込まれるような音を目指す方には良いヒントになるのではないでしょうか。
ただし新品の楽器に使用すると、粘度が高すぎるためピストンワークが悪くなる可能性があります。その場合はオイルを中くらいの粘度にしておいて、マウスピースや別の手段で補うのが良いでしょう。
⑤ヤマハ(ビンテージ) pic.twitter.com/QUJ5nDAbbH
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⑥ヘットマン(ライトピストン)
ここからはヘットマンの各種オイルの紹介となります。
ヘットマンのオイルはピストンワークと楽器の保護を両立させるべく、防サビ効果はもちろん、石油系オイルにありがちなゴムなどのパーツ劣化を防ぐことを目指して開発されました。
最初に紹介するのはライトピストンタイプです。名前の通り、ヤマハでいうスーパーライトやライトに相当するオイルです。
ヘットマンでは最も粘度が軽いタイプなのでピストンワークが軽く、高速パッセージの演奏には非常に扱いやすいです。
ヤマハのスーパーライトやライトタイプと音の飛び方が異なり、前者が一直線に突き進むタイプだとしたら、ヘットマンのライトピストンは前方広範囲にスプリンクラーのように放出されていくたタイプの音の飛び方です。
ヘットマンは全体的にヤマハよりも響きが多い音色になる傾向があり、より歌い込むような曲を演奏したい場合にはヤマハよりもヘットマンの方が有用になるかと思います。
⑥ヘットマン(ライト) pic.twitter.com/1ADxo1X929
— Hikaru (@Hikaru_tpiano) August 22, 2020
⑦ヘットマン(ピストン)
3種類あるヘットマンのバルブオイルのうち、真ん中の粘度のタイプになります。
粘度はヤマハのレギュラーよりやや高い程度で、新品から中古、どの楽器にも万能に使っていけるタイプです。
抵抗感がライトピストンに比べてはっきりと感じられるため、音にしっかりとした息圧をかけることで厚みのあるクラシカルな音色を実現できます。
抵抗感があっても吹きにくさを感じさせない辺り、ヘットマンオイルの完成度の高さが窺えます。個人的には今回吹き比べていて、プロムナードを演奏するのに一番合う音色を持つオイルだと感じました。
⑦ヘットマン(レギュラー) pic.twitter.com/CG9PUVxVqY
— Hikaru (@Hikaru_tpiano) August 22, 2020
⑧ヘットマン(クラシックピストン)
ヘットマンの中で最も粘度が高いクラシックピストンで、古い楽器や大きめの金管楽器向けのオイルです。
ヤマハビンテージに似た音色ですが、ヘットマンの方が響きが多く、ヤマハの方は密度が濃い音といった印象の違いがあります。
厚みのある暖かい音色のため、イエローブラスの楽器であってもゴールドブラスに近い音色で演奏することができるなと感じました。
抵抗感はこちらの方がヤマハビンテージに比べて僅かに軽いので、厚い音かつ息抜けを重視する方はヘットマンの方が有用となるでしょう。
⑧ヘットマン(クラシック) pic.twitter.com/qvFrRlfknk
— Hikaru (@Hikaru_tpiano) August 22, 2020
⑨トロンバT2
スライドグリスも販売しているトロンバ社のバルブオイル、T2(ティーツー)です。
多くの学生の方が使った経験があるオイルなのではないでしょうか、なんとなく吹奏楽部の普及率が高いイメージです。高校生の頃に私も使っていました。
比較的粘度が高めなオイルなので、ある程度年数が経った楽器に使用するのが最もオススメです。学校の楽器に使用されている(ような気がしている)のはこれが要因かもしれません。
しっかりとした抵抗感があり、息を多く使うローノートの際にしっかりと楽器が息を受け止めてくれるようになります。張りと芯のある音で演奏したい方、特に中編成から大編成の吹奏楽などで真価を発揮するオイルです。
ややゴミが溜まりやすいので、時々ボトムキャップを外して掃除してあげると良いでしょう。特徴的な臭いがあるので、苦手な方はご注意を。
⑨トロンバT2 pic.twitter.com/XGYbGDTx6B
— Hikaru (@Hikaru_tpiano) August 22, 2020
まとめ
今回はバルブオイルについて、各メーカーの商品のレビューと実際の演奏を比較で載せさせてもらいました。
私は実際に吹いている側なのではっきりと違いを感じることができますが、映像と音声だけではなかなか違いが分からなかったり、違いが分かっても感じ方が私と違うという方もいらっしゃるかと思います。
そもそもバルブオイルでそんなに違いが出るのかについて、「こんなのプラシーボ効果じゃないのか」と懐疑的な意見を持たれる方がいらっしゃっても不思議ではありません。
しかし多くのメーカーがバルブオイルを出している以上、全く同じということは有り得ないのです。
もしバルブオイルに違いがなければ、日本ではヤマハのものだけが流通していればそれで事足りるはずです。ですが実際にはそうではない。
この記事だけでも4つのメーカー・9種類のオイルが存在しています。入っている成分や配合などが異なれば、音色や吹奏感にも影響があると考えるのが自然な発想ではないでしょうか。
もちろん、バルブオイルが楽器演奏の全てを決定するわけでは決してありませんが、楽器演奏に変化を与える一エッセンスとしては確実に存在していると私は考えています。
もしかしたら今まで他のバルブオイルを試す機会が無かったという方がいらっしゃるかもしれません。
この記事を見て「もしかしたら違いがあるのかも……」と少しでも感じられたら、今まで使っていたものからいきなり変えるのは勇気がいることだとは思いますが、ぜひ実際に違うものを試してみてください。
今回紹介できなかったオイルについては今後試していくつもりなので、この記事が面白いなと思われた方は、ぜひ楽しみにして頂けると嬉しいです。
今回はここまで、それではまた!
バルブオイル比較の第二弾です、こちらも参考にどうぞ!

バルブオイル比較の第三弾です、こちらも参考にどうぞ!

バルブオイル比較の第四弾です、こちらも参考にどうぞ!

スライドグリスの比較もしています。
