悩んでいる人
こんな方にオススメの記事です。
この記事のもくじ
はじめに
こんにちは、Hikaruです。
人は誰しも調子が良い時と悪い時があります。
それはメンタル的な要因であったり体調の善し悪しだったり、理由は様々です。
調子が良い時は仕事が上手くいったり、プライベートも充実させることができるなど、自分にとってプラスになることばかりですから、なるべく調子が良いまま穏やかに過ごしていきたいですよね。
しかしそうはいかないのが人間というもので、調子が悪くなるタイミングは誰しも必ずやってきます。それは楽器演奏であっても例外ではありません。
例えばトランペット奏者が今までしっかりHighB♭までの音域で演奏できていたのに、ある日を境に急にそれができなくなってしまうなど、ままあるケースです。私自身も何度となく経験してきました。
ですが調子が悪いのは決して悪いことばかりではありません。
なぜなら調子が悪い時は音楽や楽器演奏における成長の兆しの可能性があるからです。
自分で自分を「問診」するように見極めていけば、その不調が本当にただの不調なのか、成長途中で起きていることなのかを判断できるようになり、慌てる必要がなくなります。
「調子が悪い」には二種類ある
俗に言う「調子が悪い」という状態には大きく二種類あります。
①心身の不調が原因によるもの
一つ目は肉体や心が疲労していたり、傷ついていることで起きる不調です。
よく野球選手やサッカー園主など、激しいスポーツをされる方に「故障」と呼ばれる現象が起きます。あれがまさしく肉体の不調に当てはまり、同じ動作を繰り返すことで肉体に疲労が溜まり、やがて機能不全に陥るというものです。
楽器奏者でよくあるのは、トランペットを含む金管楽器で長時間、何日にも渡って練習し続けることで起きてしまい唇のバテや疲労による不調ですね。コンクール直前などで調子を崩す方は大体これに当てはまります。
特にトランペットは唇周りに疲労が溜まりやすい楽器で、本番直前でガス欠になって散々な結果に終わるというケースを私も見てきました。
このような肉体的疲労による不調は、普段の体調管理や練習量のコントロールで解決できます。例えば「バテる前に休憩する」などですね。
心の不調も基本的には肉体の疲労と同じです。ショッキングな出来事が起きてしまった時、人間の肉体は普段と同じパフォーマンスを発揮することができなくなります。
よくあるのは本番で緊張してしまって楽器が吹きにくくなったり、酷い場合だとイップスと呼ばれる一種の運動障害のような状態に陥ってしまう人もいます。
野球選手やプロゴルファーによくある症状。精神的重圧などが要因で普段通りのプレイや自分の思い通りのプレイができなくなってしまう。例えばボールを投げる時に、振り切る前に腕が止まってしまうなどが症状としてある。
ジストニアと混同されやすいが、ジストニアは中枢神経系の障害により、無意識に筋肉が収縮(こわばる)してしまう脳神経の病気なので全く別物。
②成長過程で起きるもの
二つ目は演奏技術や音楽性の成長過程で起きてしまう不調です。
これだけ見てもピンとこない方が多いかと思いますので、いくつか事例を出しながら理解を深めていきましょう。
例えば木管楽器の指周りの練習を頑張っている方がいるとします。
これまでは単に上って下るだけのスケール練習をテンポ80で行っていましたが、テンポを120に設定します。更により多くのスケールパターンの習得するためアルペジオ練習の導入など、全く今までと異なる練習メニューを組みました。
この方がこのように練習を続けるならば、恐らくどこかで調子が悪くなる瞬間が出てきます。
理由は簡単で、今までと全く違うことを始めているからです。
練習内容を見てみましょう。テンポは今までより速いのでたくさん指を速く動かすようになりますから、指の筋肉には今まで以上の負担がかかります。またアルペジオ練習は単なる上下のスケールよりも口や舌などに今までとは全く異なる負荷がかかるようになっています。
このように肉体的負荷がかかりますね。
そして人間は新しいことを始める時にストレスを感じる生き物です。
例えば大学を卒業して就職する、結婚をするなど、新しい環境への移行は大なり小なりストレスを与えます。楽器で新しいこと(練習)を始めるのも全く同じです。
つまり上で挙げた心身への負荷が、新しい練習を始めることによって少しずつ降り積もるように増えていくのです。これが許容量を超えた時、不調として現れます。
場合によっては今まで問題なくできていた上下のスケールも上手くできなくなる瞬間が訪れるかもしれません。
更に人間の脳の構造にも着目していきましょう。
私たちが普段腕を上げる時、体の中でどのようなことが起きているかご存知でしょうか?ちょっと考えてみてください。
- 脳が腕を上げろという指令を出す。
- 脳と腕をつなぐ神経を通って、指令が腕まで届く。
- 指令を受け取った腕の筋肉が、腕を持ち上げる。
どうでしょうか、皆さん正解しましたか?
この指令が通る神経は、一日二日ですぐにできあがるものではありません。
今私たちが普通に行っている「立ち上がる」という動作も、赤ちゃんは数か月を掛けてやっとの思いで神経を作り上げるのですから、楽器のような細やかな全身運動を完璧に行えるような神経ができあがるには、膨大な時間がかかります。
更に練習を続ける中で、今までできていた動作と、これからできるようになるであろう動作の神経が混在する瞬間が出てきます。以下の「アップデート途中」という部分です。
- 上下のスケール⇒上下のスケール+中途半端アルペジオ⇒上下のスケール+アルペジオ(完成)
- テンポ80⇒中途半端テンポ120⇒テンポ120(完成)
この中途半端の部分では、完成後の動作ができる時とできない時が混在している非常に不安定な状態です。ここで「上手くできるようになった!」と勘違いしてしまうと、まだ完成後の動作を完璧にできていないと気付かないまま、無意識のうちに完成後の動作を再現するために自分自身に負荷をかけてしまうことになります。
アップデート途中は最も調子を崩しやすいタイミングなので、練習の際には注意深く観察していく必要があります。
ここでしっかりと自分の状態を見極めて適切な練習ができれば、不調の克服と目指していた音楽や技術を習得するのに一歩近付くことができるでしょう。
自分の状態を見極める
ここまで調子が悪い時には二つ原因があることを解説してきました。
- 心身の疲労によるもの
- 成長過程で起きるもの
不調の原因を掴むことができれば、負荷を最小限に抑えるように自分で練習量やメニューのコントロールができるようになりますが、見極めを失敗してしまうと更に不調のドツボにはまってしまったり、今まで積み上げてきた練習成果から遠ざかってしまうことがあります。
例えば肉体や心身の不調によるものが本当の原因なのに、「今成長途中なんだ!」と勘違いして更に練習を続ければ、上手くなるどころかどんどん不調が深まっていきます。
逆に成長過程で起きる不調の際に、「今は疲労しているんだな、思いきって三日くらい吹くのを辞めてみよう」としてしまうと、それまで積み上げてきた練習成果を体が忘れてしまい、振り出しに戻ってしまうということも有り得ます。
なので自分が今何をしていて、どのような状態なのかを見極めることで、失敗する可能性を減らしていくことが大切です。
以下を例に思考パターン考えてみましょう。
ハイノートが出せるように練習する。
ある時期を境に、ハイノートどころかミドルノートも出にくくなる。
肉体的不調か、成長過程で起きている不調なのかを考える⇒【肉体的不調と判断】
練習量を減らし、楽器を吹かない日を作り、リフレッシュした状態で再スタートする。
このように思考を組み立てていけば、不調が起きた際にも慌てて「もっと練習しなきゃ!」とはなりませんよね。調子を崩すリスクを減らしながら上達することができます。
特に本番前などで調子を崩すとパニックになってしまう学生さんを今まで見てきたことがあります。
私はそういう方には、調子が悪い時こそ自分の成長のチャンスだから、今までよりも練習メニューを(休むことも含めて)しっかり考えてと伝えています。
皆さんもぜひ調子が悪くなった時には自分が今どのような状況にいて、今後どうすべきなのかを考えながら練習してみてください。
遠回りなように見えて、意外とこれが近道だったりします。「急がば回れ」という言葉を大事にしていきたいですね。
今回はここまで、それではまた!
私が最近陥った不調の時のマインドセットについても参考にしてみてください。