悩んでいる人
こんな方にオススメの記事です。
この記事のもくじ
はじめに
こんにちは、Hikaruです。
今回はスライドグリスの比較、使用感のレビューになります。
以前バルブオイルの使用感の比較ということで、記事を書かせてもらいました。
微細な変化ではありますが、バルブオイルによって音色や吹奏感に色付けし、自分好みのものに近付けることが可能だということをお伝えしました。
スライドグリスはメインチューニングスライドに使用されます。チューニングスライドはマウスピースからマウスパイプまで直線的に入ってきた息が最初に息が曲がる場所で、ここの調整具合や使うグリスによって、振動の仕方や音にかかるストレスに変化が出ます。
吹奏感の大半は、マウスピースからチューニングスライドまでのバランスで決まると言っても過言ではありません。
グリスもバルブオイルと同様、吹奏感や音色に影響を与えます。そのために自分の楽器に合った、そして自分の好みにあったグリスを選ぶことは不可欠と言えます。
今回は実際にスライドグリスを吹き比べて、「超個人的」な感想・レビューをしていきます。非常に主観的な内容になりますので、ご承知おきください。
各スライドグリスの紹介
使用楽器:YTR-9335CH
バルブオイル:PDQ
マウスピース:ハモンドデザイン6MB
条件:メインチューニングスライドのみ使用後に洗浄、1,3番スライドはバルブオイル(PDQ)を使用。
- トロンバ
- バック(赤)
- バック(白)
- ヤマハ(クリームタイプ)
- ヤマハ(ジェルタイプ)
- ヤマハ(ウルトラハード)
- シルキー
- ウルトラピュア(スティック)
- Buzz
- ファットキャット
- ウルトラピュア(ライト)
- ウルトラピュア(レギュラー)
- ウルトラピュア(ヘビー)
- ヘットマン
①トロンバ
T2などのバルブオイルでもお馴染み、トロンバのスライドグリスです。木管楽器のコルクにも使用可能です。
ヤマハのレギュラーよりもやや固めのグリスですが、窮屈さを感じさせず非常に自由な吹奏感で非常に扱いやすいグリスです。
赤ジャムとシルキーの中間的な特性を持っており、音色はシルキーよりはやや落ち着き、バックよりは明るい。息の流れもシルキーほどすっぽ抜けることがなく、バックよりは抜けるといった印象です。
全体的に高品質でまとまりつつステータス的に尖りがないグリスなのでどのような場面であっても使用できるグリスだと個人的には感じており、現在イチ押しです。
グリスそのものはシルキーのグリスとよく似ており、シルキーのグリスだとやや吹奏感が軽すぎたり、音がすっぽ抜けてしまうと感じている人に大変オススメのグリスです。
②バック(赤)
言わずと知れたバックのグリス、元々はセルマーのコルクグリスとして販売されていたので、白いケースのものを持っていた方も多いのではないでしょうか。
通称:赤ジャム・イチゴジャムと呼ばれるグリスです。
ジェルのような質感で、粘度は高めのグリスになります。Bachユーザーの大半はこちらを使っている印象です。粘度は高いですが伸びも非常に良く、スライド全体にムラなく塗りやすいです。
粘度が高いグリスは、楽器を握りしめたような音になる傾向があるのですが、赤ジャムに関してはそれが少ないように感じます。楽器全体がしっかり共鳴し、程よい抵抗感があるためバックナイズされた音色になりやすいです。
ただし夏場、気温が高いと溶けて柔らかくなってしまうため、追加で塗ったり、また溶けた分を拭き取る必要があるのが難点ですが、それを補ってなおこのグリスを使用する価値はあると思います。
Bach Tuning Slide Grease 2942B
③バック(白)
②と同じくバックのグリスで、こちらが純バックのスライドグリスです。
上記で紹介した赤ジャムよりも柔らかいグリスで、よく伸びるグリスです。というのも赤ジャムのジェルタイプとは異なりクリーム状のタイプなのが理由です。
クリーム状のグリスはジェル状のものに比べて軽い吹奏感と息抜けが良い傾向があり、また夏場でも溶けにくいこともあり、扱いやすいタイプとなっています。
赤ジャムに比べると息が真っすぐに入る傾向があり、やや軽い抵抗感のため赤ジャムだと苦しいと感じる方にはオススメのグリスです。
私も以前赤ジャムだと吹奏感が重たいと感じていたことがあり、こちらのグリスに切り替えたところ好みの吹奏感を手に入れられた経験があります。
バックの厚い音色よりもどちらかといえば明るくやや張りのある音色になる傾向がありますので、重厚感のある音色や吹奏感が欲しい方には赤ジャムを、ややさっぱりした息抜けの良い吹奏感が欲しい方にはこちらの白いグリスをオススメします。
④ヤマハ(クリームタイプ)
同じくヤマハ、こちらはレギュラーのクリームタイプとなります。
粘度はBachの赤ジャムよりは低く、シルキーよりは固い、中間的な柔らかさです。見た目も白なので、よりニュートラルな印象です。
非常に持ちがよく、一度塗れば暫くは塗らなくても大丈夫です。スティックのタイプのものも販売されています。以前は緑色のグリスで、よく楽器を掃除した時に出てくる緑色のヘドロの原因はこのグリスが改良される前のものだったりします。
改良されたことにより、ピストンケーシング内にグリスが流れ込むことはほとんどなくなりました。使用時の音色はクセのないクリアな印象です。抜けと抵抗感のバランスが非常に良いグリスだと感じました。
⑤ヤマハ(ジェルタイプ)
④に続きヤマハのグリスです、こちらはジェルタイプのものになります。
先端がヘラのように平べったくなっているので、指を使うことなくグリスをスライドに塗り込むことができるので汚れる心配は少ないですが、ジェルタイプかつかなり粘度があるグリスなので、結局は指で伸ばす方が良いかもしれません。
②のバック赤ジャムよりもかなり粘度があり、スライドをガッシリとホールドするため、余程古い楽器でなければスライド脱落の心配はほぼ無くなります。
息を流す際にはっきりとした抵抗が感じられ、芯が厚くやや固めの音色が特徴的です。
⑥ヤマハ(ウルトラハード)
ヤマハが販売するグリスの中で最も固く、粘度の高いタイプのグリスです。
以前、メインチューニングスライドが摩耗してしまい、ピストンを押した振動で抜けてきてしまう状態だった時に応急処置的に使用しました。
スライドが摩耗してしまった楽器には良いかもしれませんが、まだまだ新しい楽器に使用するとスライドが非常に固くなってしまうので、取り扱いの点であまりオススメはしません。
今回使用した楽器は購入後2年程で調整もしてあるものなので、スライドを抜く際に非常に苦労しました。
抵抗感が強すぎてこもったような音色になってしまうので、しっかり響かせたい場合には合わないでしょう。
⑦シルキー
アメリカのメーカーとしてはバックに並んで名高い、シルキーのスライドグリスです。
比較的サラサラしたグリスで、指で塗ると良く伸びる柔らかな使用感が特徴的です。グリスとしては赤ジャムに並んで人気のあるもので、リペアマンが好んで使用しているのを聞いたことがあります。
シルキーはもちろん、ヤマハのZホーンやエリックモデルと呼ばれるジャズ・ポップスに使用される楽器群など、息の量よりも流れを重視する、いわゆる軽い楽器に非常に相性の良いグリスです。
明るくきめの細かい、シルクのような音色が特徴的で、これがシルキーの音色なんだなと感じさせてくれる使用感です。特に音のつながりがシルキー独特の滑らかなものに近付きます。
金管楽器の演奏に必要な息の流れを止めない印象があり、クラシックからポップスまであらゆるジャンルに対応可能なグリスだと感じました。
逆に抵抗感はあまりないので、抵抗に頼って演奏するスタイルのプレイヤーだとすっぽ抜けてしまい吹きにくさを感じる場面があるかもしれません。
⑧ウルトラピュア(スティックタイプ)
トランペットとしてはバルブオイルが有名なウルトラピュアのグリスです。こちらは木管楽器のコルクにも使用可能なタイプです。
見た目はヤマハのスティックタイプのグリスとよく似ていますが、このグリスの最大の特徴として油分が極端に少ないことが挙げられます。
実際にスライドに塗ってみると分かりますが、クレヨンをグリスに塗っているような感覚になります。塗っただけだとスライドに馴染まないので、指で伸ばしてあげましょう。
粘度はやや低めのグリスではありますが、前述の油分の少なさからやや締まった、それでいてどこか乾いたような音色になるため、メロウな曲やシーンで演奏する場合に効果を発揮すると感じました。
⑨Buzz
多くのメーカーに対応したカスタムパーツを販売しているBuzz製のスライドグリスです。
やや高めの粘度を持ち、トロンバよりもスライドを気密しますが、油分が多少あるためスライドはそこまで固くなりません。
油分が高いグリスは艶のある音になりやすいと個人的には感じており、Buzzもその例に漏れません。やや艶があり、粘度の高さから来るしっかりとした抵抗感と締まった音で演奏することができます。
抵抗感としては赤ジャムが一番近いため、近い吹奏感でより艶のある音を目指したいのであれば一度試してみることをオススメします。
⑩ファットキャット
低音楽器用のバルブオイルも製造しているファットキャットのグリスです。
今回一番驚いたグリスがこのファットキャットのもので、低音楽器用のバルブオイルを作っているメーカーなのだからグリスも粘度が高いのかと思いきや、比較的粘度の低いサラサラ系のグリスでした。
粘度としてはシルキーとトロンバの中間くらい、油分も程よい量でスライドの動きも固すぎず柔らかすぎず、非常にストレスのない抵抗感と抜け過ぎない息の感じが好感触でした。
シルキーだとすっぽ抜ける、トロンバだとやや吹奏感や音色に固さがある、という方にオススメなグリスです。今回一番のダークホースでした。
見た目はモンブランです。
⑪ウルトラピュア(ライト)
ウルトラピュアのスライドグリスの中で最も粘度が軽いタイプのものです。
購入してから気付いたのですが、これは主管用ではなく1,3番スライドに使用するのがメインの使い方でした。しかし買ってみたのでどうせならと主管に使用してみました。
主管に使うには当然緩いので、スライドが擦り減った楽器に使用してしまうと脱落の危険がありますので、使用しないようにしましょう。(私の楽器は大丈夫でした)
やはりここまで粘度が軽いと息がすっぽ抜ける感じがよく分かります。グリスというよりもスライドオイルに近いので油分も多く、非常に艶のある音になりました。
⑫ウルトラピュア(レギュラー)
ここからがウルトラピュアの主管用のスライドグリスとなります。
透明の水飴状の見た目が特徴的で、ジェルタイプに近いやや高めの粘度を持ちます。
ジェルタイプ特有の締まった音としっかりした抵抗感がある吹奏感で、滑らかに演奏するというよりも一音一音にドスを利かせるような迫力のある演奏に向いたグリスです。
音色ほど息抜けは悪くないので、比較的扱いやすいグリスだと感じました。
⑬ウルトラピュア(ヘビー)
ウルトラピュアのレギュラーよりも遥かに高い粘度を持つグリスで、これまで使用してきたグリスの中でもトップクラスの粘度です。
ヘットマンやヤマハのウルトラハード同様、スライドが擦り減った楽器以外に使用すると抜けなくなる危険性があるため、取り扱いには注意が必要です。
ただ演奏してみると上の二つに比べると比較的音の詰まりがなく、あからさまな音のこもりも少ないため、スライドが擦り減ってしまった際の応急処置として使用するには一番良いグリスなのではないでしょうか。
⑭ヘットマン8番
バルブオイルからロータリーオイルまで幅広く製造しているヘットマンのスライドグリスです。
見た目はシルキーのものに似ていますが、かなりの粘度の高さを持っていて、正直初めて使ってみて今回驚きました。
スライドが摩耗してしまった古い楽器には良いかもしれませんが、新しい楽器に使用するとスライドが非常に固くなってしまうので、楽器に不要な力をかけてしまって傷めてしまう可能性も考慮し、取り扱いの点であまりオススメはしません。
ただし音抜けに関してはヤマハのウルトラハードや、この後紹介するウルトラピュアのハードに比べて幾分か良く、演奏する分には比較的扱いやすいと感じました。
ですがやはりかなり締まった音になるので、好みが分かれるところです。
ヘットマン メインチューニング管用 スライドグリス No.8
まとめ
今回はスライドグリスについてレビューをしてみましたが、いかがだったでしょうか?
グリスはバルブオイルに比べ、楽器の状態に合わせて使い分ける必要があるため、お持ちの楽器によっては多少選択肢が狭まってしまうこともあるかもしれません。
バルブオイルに比べるとメンテナンス品としての側面が強いですが、聞き比べて頂くとかなりはっきりと音色に差があり、カスタマイズ性を持ったものであると感じて頂けたかと思います。
今回紹介したのものが日本で主に出回っているスライドグリスになりますが、もちろんこれ以外のものも世に出回っており、それぞれが個性を持っています。
ぜひ今一度、自分の楽器の状態、またどんな楽器を吹きたいのか、考える機会になってもらえたら幸いです。
今回はここまで、それではまた!
バルブオイルの比較記事です、こちらも参考にどうぞ。