悩んでいる人
こんな方にオススメの記事です。
この記事のもくじ
はじめに
こんにちは、Hikaruです。
金管楽器を演奏するのに必要不可欠なものはマウスピースです。プロもアマチュアも関係なく、マウスピースがなければ音が出せません。
マウスピースを探す時、きっと皆さんはメーカーのカタログやホームページで品番やカタログスペックを調べてることで、自分に合ったリムサイズやカップの深さを見つけたら、じゃあこれを買おう!と言った流れで決めることでしょう。
しかしカタログスペックを信じ過ぎると、思わぬ落とし穴があります。
人間は不思議な生き物で、似たような数字やアルファベットが並んでいると服のサイズのS,M,Lのように「サイズが違うだけなんだ!」と錯覚しがちです。
洋服であればそれで良いのですが、トランペットのマウスピースは数字が違えばサイズだけでなく形まで変わってしまう非常に複雑なものなので、カタログだけを眺めていてもそれが実際に自分に合っているかまでを判断するのはとても難しいのです。
今回は世界的に愛されているバックのマウスピースを例に、カタログだけではスペックを判断できない理由について解説していきます。
カタログスペックだけで判断するのは危険?
バックのマウスピースは、3Cのように数字とアルファベットで型番が当てはめられており、数字はリムの内径を表し、アルファベットはカップの深さを表します。
この組み合わせによって、最終的なスペックが決まります。
数字は1~20まで、数字が小さいほど内径は大きくなります。アルファベットはA~Fまで、Aに近付くほどカップが深くなります。
大体の奏者はCの深さのカップを使用している印象があります。(Vなどの特殊なカップもありますが、ここでは割愛します)
ですが、このバックのマウスピース、単に数字とアルファベットで大きさ深さの判断をすれば良いというわけではありません。
まずはバックの2番と3番のリムサイズを比べてみましょう。
・「2」番のリムのカタログサイズ:16.5mm
・「3」番のリムのカタログサイズ:16.3mm
サイズだけ見ると、その差は僅か0.2mmそこまで極端な差があるわけではありませんが、ここに落とし穴があります。
というのも、例えば「2」のリムと「3」のリムを比べた時に、単にリムサイズが違うだけではないからです。
下の画像をご覧ください。
・緑の線:2Cの断面図 / 赤の線:3Cの断面図
かなりリムの形が違うのが分かりますよね。
バックのリムは数字によって内径が違うのはもちろん、同時にリムの形も異なるのです。
リムの形は、マウスピースを選ぶときの第一印象と言っても良いぐらい重要な要素です。
というのも、口に当てがった時の口当たりに直結するものだからです。その人に合ったものを選ぶ必要があります。
リムには内径、厚さ、カンター、バイトなど多くの部位があり、これら全ての形状の違いが口当たりの違いにつながります。
先述した2番と3番では、リムの内径だけでなく厚さ・カンター・バイトも違うので、単に3番の内径が自分にとって小さいから2番を選ぶという考えでマウスピースを購入すると、失敗をしてしまう可能性があるのです。
カタログスペックを信じるのは危険?
マウスピースのカタログはメーカーだけでなく、有志が作成されたホームページも含め、インターネット上で散見されます。
これ自体については、ユーザーである私たちが情報に触れる機会を増やすという意味でとても良いことだと思います。
しかし、バックのマウスピースはここにも落とし穴があるのです。
以下にバックのホームページに記載されたマウスピースのリムサイズを記載します。
・3番:16.3mm
・7番:16.2mm
3番と7番はプロからアマチュアまで親しまれている番号のリムだと思いますが、カタログスペックだけ見ると0.1mmしか違いがないのです。
ですが実際にそれぞれを口に当てて吹いたり、また実際に現物を見てみると、0.1mm以上の違いがあるように感じられる方がほとんどだと思います。
次にヤマハのマウスピースのリム内径を記載します。
・14番:16.88mm(バック3番のリム内径と同等とされている)
バックの3番のリム内径と同等と言われているヤマハの14番のリム内径は、公式ホームページにて16.88mmと記載されています。
同等のはずなのにバックは16.3mm、ヤマハは16.88mm、この違いはあまりにも大きいです。
メーカーによってはリムサイズを計測している場所が異なっている場合がありますので、恐らくバック社が計測した場所では3番は16.3mmで、ヤマハ社が計測した場所では16.88mmだったのでしょう。
しかしこのように実際には同等のサイズとされているマウスピースの実測値が異なると、ユーザーである私たちは混乱しますよね。
なのでカタログスペックだけで購入するマウスピースを判断するのは危険と言えます。
【ツール紹介】マウスピース選びで失敗しないためには
できるだけマウスピース選びで失敗しないようにするには、リムサイズだけではなく、多くの部位について考えて自分に合った運命のマウスピースを選ぶ必要があります。
ですが初心者の方やマウスピース選びに慣れていない方が全てを調べるのは困難でしょう。
もちろんお店で実際に吹いて試すのが一番なのですが、場合によってはそれが難しい人もいらっしゃるかと思います。
そんな方たちのために、マウスピース選びに役立つツールを2つほど紹介します。
カンスタルマウスピースコンパレーター
カンスタルというメーカーが出しているマウスピースの比較ツールです。
上のマウスピースの比較画像もこちらで作成したものです。
使用方法は至って簡単で、ページを開いて下の画像矢印で示したボックスから比較したいマウスピースを選択するだけです。
バック現行モデル、マウントバーノンバック、ニューヨークバック、モネット、ワーバートン、パデューバ、シルキー
このようにリム形状だけでなく、カップの深さやスロート部の入り込み方なども見ることができるので、もし対応メーカーのマウスピースをお持ちの方は違うマウスピースの購入に大変便利です。
ベストブラスホームページのマウスピース比較表
楽器メーカーのベストブラスにて、マウスピースの比較表を作成してくれています。
バック現行モデル、ヤマハ、シルキー、ラスキー、ベストブラス
複数メーカーのマウスピースのリム内径、深さを表にしてくれているため見やすいですね。
ベストブラス社が各マウスピースを同じ条件で計測しているので、信頼できる数値でしょう。
上の例に出したバックの3番とヤマハの14番がほぼ同等のリムサイズという部分についても表から見て取ることができますね。
バックのマウスピース小噺
なぜバックのマウスピースは、リムの数字の違いで内径だけでなく、リムの形そのものまで異なるのでしょうか。
ここからの話は私の憶測に過ぎません、参考程度に見て頂ければと思います。
バックの創業者であるヴィンセントは、当時ヨーロッパでソリストとして名を馳せ、アメリカに渡った後はボストン交響楽団などの首席奏者として活躍をしていました。
その間にマウスピースの重要性に気付き、マウスピースの製作を始めます。それがより深まっていった結果、今なお世界で愛されるヴィンセント・バックの楽器が誕生しました。
マウスピースの製作には、当時活躍していたプロトランペッターたちの意見も当然入っていると考えられます。
ある奏者にはこの大きさのリムが、この深さが、バックボアが、スロートが……このように作っていくうちに、各々の奏者に合ったもの、つまりスペックが全てのマウスピースで異なるものが出来上がったに違いありません。
ヤマハからエリック・オービエモデルや、フリッツ・ダムロウモデルが出ているように、名前こそ付いていないですが、バックのマウスピースも当時のプレイヤーたちのシグネチャーモデルだと言えます。
ここまでが私のバックマウスピースに対する考えであります。
もしかしたらヴィンセントが商品化する際に、単純にリムやカップのバランスを考えて変えただけかもしれませんが、同じCカップでもリムによって深さが違ったり、リムが番号による単純な内径比較ではなく形状までもが異なることに説明がつきません。
バックのマウスピースは、日本においてはヤマハのスタンダードモデルに次いで、かなり安価で購入できるマウスピースの一つです。
今バックのマウスピースを使っている方も、これから購入しようと考えている方も、良し悪しを判断して、自分に合った運命の一本を探してみてください。
今回はここまで、それではまた!
マウスピースの各部機能についてまとめた記事です。
初心者向けのマウスピースについてまとめた記事です。
バックの奇数番号の人気モデルについて、リム形状やスペックを元に検証しました。マウスピース選びの参考にどうぞ!