音楽は一生の友、いつまでも音楽と過ごすことを目指す副業トランぺッターのブログ。

バックのピストンバネのお話、新型と旧型の違い

バックのピストンバネのお話、新型と旧型の違い

悩んでいる人

バックのピストンバネって新しいのと古いのがあるの?違いはいったい何?

 

こんな方にオススメの記事です。

 

はじめに

こんにちは、Hikaruです。

金管楽器奏者の方であれば、Bach(バック)という名前を一度は聞いたことがあるでしょう。

バックは1918年の創立から現在に至るまでトランペットを中心に世界の金管楽器をリードし続けているメーカーで、2018年で創立100周年を迎えています。

100年という長い歴史の中で、バックは楽器の形や構造、そしてパーツの形を変化させてきて現在に至ります。これらの変化はその時代の音楽スタイルや求められる音色により変化しており、今後もそれは続いていくでしょう。

特にピストンの中にあるバネは楽器メーカーの歴史だけでなく、モノづくりの歴史や背景、そしてその時代に求められていた音色や吹奏感についても勉強する良い資料となります。

バックは時代によってピストンバネの形状が変わっているメーカーです。今回はこのピストンバネに主軸を置いて、トランペットのみならずモノづくりについても触れながら、解説していきたいと思います。

時代によって変わるピストンバネの形

私たちがトランペットを演奏する際に一番肌で感じることができるのは指、すなわちピストンの押し心地です。押し心地が悪かったり、ピストンの戻りが悪いと楽器としてちょっと心配になりますよね。

この押し心地や動きの良さに関わるのが、ピストンバネです。

ピストンバネは大まかに形が二種類に分かれます。

バネの種類
・ストレート型
・タル型

下の写真はバックの楽器から取り出したピストンバネです、形の違いをご覧ください。

●写真左:現在の楽器のバネ / 写真右:1980年代の楽器のバネ

いかがでしょうか?形が違うのが分かると思います。どちらもバック純正のバネです。

一般的にバネはストレート型にすると反発が強くなり、タル型にすると反発が弱くなります。そしてストレート型はどちらかといえば音が細く芯のある音になり、タル型は反対に音が太く広がるような印象になります。

バネの反発が強いとガチャガチャ音がしやすいので、ステージの上などで音が出ないように気を使う必要が出てきます。

バックに限らず、古い楽器はタル型のバネが多いです。これは製造技術の進歩と関係があります。

技術が進むとバネはストレートに?

製造技術がまだ未発達だった時代には、品質を均一にするのが現代より難しかったとされています。

そのためストレート型のバネのように形を均一にしなければならない製品は生産コストが高く、当時はある程度形や品質が不均一であってもバネとしての役目を果たせるタル型が主流でした。

タル型は製作しやすい反面ヘタりやすく、長い時間使っているとバネの戻りが弱くなり、ピストンの動きも悪くなってしまいます。

さらにバネがヘタってしまうとピストン内部でバネとピストンが触ってしまい、演奏に不都合が出ます。

これを解消するために、製造技術の進歩と共にストレート型のバネの採用へ向かっていきます。

バックでストレート型のバネが使われるようになった頃(大体2000年頃と言われています)には製造技術が進歩していましたから、大量生産が可能です。

ストレート型のバネを安く、かつ反発を抑えられるような製品が製造できるようになったのでしょう。

そしてこの頃からバックの音色は武骨な厚いものから、現代に求められるスマートな音色にシフトしていくことになります。

あくまで推測でしかないですが、製造技術の進歩という観点で見るとこの変化は妥当なものではないかと私は考えています。

実際に現行のストレート型と1980年代のタル型でピストンワークを比べてみた時に、そこまでの違いは感じられませんでしたが、タル型の方がやや柔らかな押し心地のため好きな人は好きかもしれません。

タル型とストレート型の音の違い

皆さん気になってくる部分だと思いますので、結論からお伝えします。

ピストンバネによる音の違い

ストレート型:抵抗感が少なく、軽めな吹奏感に。音色は素直で澄んでいる。
タル型:抵抗感があり、しっかりとした吹奏感に。音色は暖かく太めになる。

楽器とのバランスもありますが、ざっくり分類するとこのようになります。

このことから旧型のバックの楽器はどっしりとした粘りがあるような吹奏感を持つ傾向があります。いわゆる古き良きバックというやつですね。

逆に現代のバックはスマートな吹奏感で、旧式のバックに比べコンパクトで素直に鳴ってくれる印象があります。個人的には現行バックの方が好みです。

これは時代によって求められる音色が変わるため、楽器もそれに応じて変化しているということなのでしょう。

現在の楽器はストレート型のバネが多いため、純正パーツだとタル型のバネを試す機会がなかなかありません。

ここで私が知っている範囲になりますが、カスタムパーツでタル型のバネを販売しているメーカーを紹介します。

BSC(ビーエスシー) ハイスピードバルブスプリング

BSCというメーカーが出しているハイスピードバルブスプリングです。

ステンレス製のバネで、ピストンワークを向上させるために開発された製品です。かなり素早くピストンが動かせるようになるので、速いパッセージを吹く方などにはオススメです。

地味にタル型なので、吹奏感の違いを試してみたい方はぜひ購入してみてください。

オマケ:ピストンバネ雑学

ここからはオマケのピストンバネ雑学になります。

ピストンバネにはいくつか素材に種類があり、メッキ処理などを施すケースもあります。

素材の種類
  • ステンレス
メッキの種類
  • 金メッキ
  • ピンクゴールドメッキ
  • グリーンゴールドメッキ
  • プラチナメッキ
  • etc

これらの素材、メッキの違いによって、ピストンの押し心地や吹奏感にも変化が出ます。

ステンレスのバネは銅のバネよりもピストンワークが軽く、吹き心地も抜けるような感覚でポップスに向きます。

銅はクラシック用の楽器に多く使われていることもあり、落ち着いた吹奏感と太い音が特徴的です。

また金メッキにすると音色が明るくなり抵抗感が結構増すので、興味がある方は試してみてください。

バネ自体が比較的安く手に入ることから、バネの交換は楽器の改造としてはメジャーです。

また国産のヤマハなどはたくさんのカスタムパーツが販売されている他、純正パーツの取り寄せも容易です。エントリーモデルにプロモデルのパーツを流用することで、大きな変化が生まれるかもしれません。

MEMO

バックのタル型のバネは現在は通常生産されていないことからプレミアが付いており、中古市場で高値で取引されます。

プロ奏者もこちらのバネを求める方が多くいるようで、これから益々価格は上がっていくと予想しています。持っている方は安易に交換して捨ててしまったりしないように、大事に使いましょう。

今回はここまで、それではまた!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

Twitter
SHARE