悩んでいる人
こんな方にオススメの記事です。
この記事のもくじ
はじめに
こんにちは、Hikaruです。
マウスピースはプレイヤーが吹奏感や音色を求めて自分に合ったものを模索するものですが、自分の表現したいものと使うマウスピースのギャップが埋まらずに苦悩したプロ奏者も多くいらっしゃいます。
その中の一人が、ジョン・ハグストロム氏です。
現在アメリカのシカゴ交響楽団で2ndプレイヤーを務めるハグストロム氏は、マウスピースによって得られるスタミナと音色の良さのバランスに悩み続けていたプレイヤーの一人です。
そんな彼が出会ったのが、今回ご紹介する「ハグストロムモデル」と呼ばれるマウスピースです。
ジョン・ハグストロム氏の悩み
ハグストロム氏は学生時代、大きい内径のマウスピースを使うことこそ、優れたオーケストラサウンドを得るために必要だと教わり、それに倣っていました。
学生時代のハグストロム氏はバックの1Bや1-1/4Cなどの一般的に大口径と呼ばれるタイプのマウスピースを使用していました。大きいマウスピースは音色や音量こそ豊かになるものの、スタミナを大きく消費してしまう難点があり、ハグストロム氏にもこのデメリットがのしかかります。
ハグストロム氏の大学卒業間近になると、演奏する楽曲の難易度が上がってきました。するとリサイタルの最後までスタミナが持たないという問題が顕在化します。
じゃあ内径が小さいマウスピースにしてしまおう、と簡単にはいかないのがマウスピースの難しいところです。
対処方法として小さい内径のマウスピースに変えて演奏をしてみたところ、本番を余力を残してやり切ることが出来ましたが、満足のいく音色にはならなかったのです。
一般的な形をしたマウスピースは、内径が小さくなるとカップの容量も同時に減ってしまうため、人によっては音量を出した時に割れてしまったり、裏返ってしまうことがあります。
また内径を小さくし過ぎてしまうと、所謂痩せた音や、ジャズなどに使う音に近付いてしまうため、クラシックのジャンルで使うには不向きと言えます。
そこでハグストロム氏は、スタミナと耐久性を維持しつつ豊かなサウンドを得る方法はないかと模索を始めました。
こうして生まれたのが、彼の名を冠するシグネチャーマウスピース「ハグストロムモデル」なのです。
ハグストロムモデルの特徴
ハグストロムモデルはハグストロム氏の考えの元、「大きい内径のマウスピースが持つ豊かな音色と大音量」と「小さい内径のマウスピースが持つスタミナ」を合わせ持つモデルとしてアメリカのパーク(PARKE)社より開発されました。
このマウスピースは外形こそバックなどの一般的なマウスピースと同様ですが、カップが特徴的な形をしており、恐らくこの世で唯一無二のカップのモデルです。
文字で説明すると、カップがリム側に食い込むような形になっていて、エグリが極端に大きくなったような形と言えば分かりやすいでしょうか。
パーク・ハグストロムモデル画像
カップがリム側にえぐれている(!)
画像でなんとなくカップの形が分かったでしょうか。
ハグストロムモデルは、リムの内径は小さいマウスピースのように、そしてカップは大容量のマウスピースのように作られています。
つまり、内径は小さいけれどもカップは大きいので、小さいリム径のマウスピースでも音が痩せず、クラシックに向いた音色で演奏ができる、という構造になっています。
また詳細なスペックについてですが、パーク社に直接質問したところ、以下回答が得られました。
パーク・ハグストロムモデルのスペックbyPARKE社
- リム内径:バック7Eより僅かに小さい
- カップ:バック1B
- バックボア:24番(シンフォニックボア)
- スロート:#26
バックの7Eのマウスピースと言えば、ピッコロトランペットに使用されることが多いモデルなので、ハグストロムモデルの内径の小ささが良く分かります。
ハグストロムモデルのすばらしさと手に入れにくさ
ハグストロム氏本人は、「このマウスピースのおかげで私は、耐久力や柔軟性を犠牲にすることなく、世界で最も大きな音を出すプレーヤーたちと一緒に演奏することができている」と述懐しています。
オーケストラの世界はそれだけ音量や豊かな音色が要求され、かつ周囲のプレイヤーも大口径のマウスピースを使うことが多かった中で、ハグストロム氏がその舞台に居続けるためにどれだけの模索をしたのかがうかがい知れる発言です。
私も以前まではハグストロム氏のようにバックの1-1/2Cなど、比較的大きめなマウスピースを使用していたのですが、同様にスタミナの問題に悩まされました。私の悩みとハグストロム氏の悩みが合致していたのです。
そこでハグストロムモデルの存在を知り、なんとかこのモデルを手に入れることができました。
初めて手にしたのは数年前の話ですが、コントロールに容易く、このサイズとは思えない程にふくよかな音色で、ソロからオーケストラ、吹奏楽まで対応出来るマウスピースだと感じました。
何よりリムの形や感触がよく合っていました。今でもこのハグストロムモデルをベースにオーダーメイドしたマウスピースを使用しています。
ちなみにパークは日本で基本的に取り扱いがないため、海外から個人輸入するか中古で販売されたタイミングで手に入れるしかなく、特にハグストロムモデルは出品もほぼない状況です。
しかしヤマハが海外限定モデルとして、パークのハグストロムをコピーしたものを販売しており、最近は日本でも販売されているのを時々見かけます。
ヤマハ ハグストロムモデル
ヤマハが販売するハグストロムモデルのマウスピースです。
パークのハグストロムモデルをコピーしたもので、基本的なスペックは大体同じですが、仕上げがオリジナルは銀メッキのところ、ヤマハのものはややサテン(つや消し)がかったような見た目になっています。
また外形もヤマハのものではなくバックと同様のものになっているという拘りっぷりです。
吹いてみた感想は、パークのものが明るく抜けのよいものだとしたら、ヤマハのものは身の詰まったダークな音色といった感じなので、ヤマハの方が合いそうだと感じたらまだこちらの方が手に入れやすいので、興味がある方はリサーチしてみてください。
まとめ
今回紹介したハグストロムモデルは大口径のマウスピースだとバテてしまう方には非常にオススメで、小さい内径のマウスピースでも大口径のマウスピースと同じような音色を手に入れることができるんだ、という一例です。
マウスピース選びは終わりがないですが、もしパークのハグストロムモデルに興味を持たれた方がいたら、ぜひパーク社へ連絡を取ってみてください。
日本人で英語もたどたどしい中メールをしても、スペックまで教えて頂けるなど、大変きめの細かい対応をして頂きました。
マウスピースのサイズと音色のバランスで悩む方がいたら、このハグストロムモデルを試してみると発見があるかもしれません。
今回はここまで、それではまた!