悩んでいる人
こんな方にオススメの記事です。
この記事のもくじ
はじめに
こんにちは、Hikaruです。
トランペットは金管楽器の中では値段が安い方で、構えるのに重すぎない楽器なので、老若男女を問わず始めやすいという利点がある人気のある楽器です。
しかしトランペットを含む金管楽器は、リコーダーや鍵盤ハーモニカなど小中学校で習うような楽器と音の出し方が全く異なるため、最初に音を出すまでに苦労する楽器でもあります。
今回はトランペットをほとんど初めて触る方向け、またトランペットの演奏に慣れてきたけれども音が出る仕組みや原理については詳しくない方向けの内容となります。
どのようにすれば金管楽器の音を出すことができるのか、仕組みを交えながら解説していきます。
楽器の音の源泉は振動
管楽器は木材や金属、プラスチックなどを筒状に加工したものを総称したもので、音を出すためには振動が必ず必要になります。
リコーダーは息を入れただけで音が鳴るように、つまり振動するように初めから作られているので、音を出すだけならば誰でもできるというような楽器です。リコーダーのような楽器は「エアーリード」と呼ばれます。
トランペットなどの金管楽器は、リコーダーと違い息を入れるだけでは音が鳴りません。要するに息を入れるだけでは振動が生まれない仕組みになっているのです。
ではどうやって音を出すための振動を生むのかというと、唇の振動(※)によってトランペットなどの金管楽器は発音をすることができます。
そのため金管楽器は「リップリード」と呼ばれます。
ちなみに金管楽器は金属で作られているからそのように呼ばれるのではなく、発音原理がリップリードの楽器を全て金管楽器と呼びます。
そして、この振動を発生させるための栄養が呼吸(エアー)です。
試しに唇を閉じたまま、息を吐こうとしてみてください。その時に唇がブルブルと震えると思います。これが金管楽器の音の源です。
この振動をマウスピースのカップの中で行うと、マウスピースから発せられた唇の振動が楽器を共鳴させ、メガホンと同様の役割を持つベルから出ていくことで初めて音となります。
このことから金管楽器は楽器本体のみでは楽器として完結しておらず、奏者である私たち人間と合わさることで初めて楽器として完結すると言えるでしょう。
より効率の良い振動を生み出す
唇の振動がトランペットの発音に必要なことが分かりましたが、上で述べたようなただ唇をブルブルさせるだけでは、トランペットで綺麗な音を出すためには振動が足りません。
特にトランペットはマウスピースが小さいため、ロウソクの火を吹き消すような細い息で「フーッ」とマウスピースへ息を送り込む必要があります。
そして息が通り抜ける唇についても、より効率の良い振動を生み出せるような状態を維持できるよう訓練することが必要となります。
- リラックスした呼吸
- 程良いテンションの唇
- 唇の隙間(アパチュア)の状態
①リラックスした呼吸
トランペットに限らず、管楽器に共通することは呼吸です。ガソリンが無ければ車は走れないように、呼吸が無ければ管楽器に必要な振動を生み出すことができません。
であれば、管楽器の演奏には必然的に呼吸が重要になってきます。
金管楽器について、皆さんはどのようなイメージをお持ちでしょうか。
頬を目一杯膨らませて、顔を真っ赤にして演奏しているキャラクターなどが思い浮かぶかもしれせんね。他には炎天下の野球の試合で力いっぱい応援演奏しているなんてのもイメージしやすいでしょうか。
実際にはそこまで呼吸に力は必要ではなく、むしろ必要以上の力は楽器演奏にとっては邪魔になってしまうことがほとんどです。
そもそも私たちは生まれる前から呼吸をすることができていますから、頑張って呼吸をする必要はないのです。
もちろんある程度のレベルの表現や演奏をしたいとなると、全く日常通りの呼吸というわけにはいきませんが、それも体に無理をかけるようなものではありません。
なのでまずは日常の動作と同様のリラックスした呼吸で唇を震わせ、マウスピースまで届けてあげましょう。ここで楽な呼吸で演奏するクセをつけることができると、後々苦労することがないので、ぜひ身に着けましょう。
イメージが湧かない方は、ヨガなどの呼吸を伴う運動をゆったりとしたペースで行うことで、リラックスした呼吸を体感することができるので、個人的にはオススメです。
②程良いテンションの唇
リラックスした呼吸について理解できたら、次はその呼吸が通る唇について考えてあげましょう。
上の方でも書いたように、唇を閉じた状態で息を吐くと唇がブルブルと震えますが、ただ唇を閉じた状態では振動がゆったりと大きなものになります。
トランペットの演奏にはこのような振動では到底足りませんし、高い音を演奏するのであれば更に速く細かい振動が必要となります。
そこで必要なのがテンションという要素です。
テンション:緊張・張り・伸長力などの意味を持つ。日本語で使われるテンションとは意味が異なる。
輪ゴムを例にすると分かりやすいので、解説していきます。
輪ゴムの一か所を指でつまんでいる状態で輪ゴムに触れてみても、輪ゴムは特に反応しません。ただ指が触れるのに合わせて動くだけでしょう。
では輪ゴムの二か所を摘まんで横に軽く引っ張った状態で輪ゴムに触れると、ブルブルと震えます。この時輪ゴムにはテンションがかかった状態なのです。
もう一つ例を出しましょう。ギターやヴァイオリンなどの弦が緩んでいる状態だと、音が出ませんよね。
ですがちゃんと弦を張ってピンと張り詰めた状態にすると、音が出るようになります。これも輪ゴム同様、弦にテンションがかかっている状態となります。
唇は弦楽器の弦と同じ役割を持っているので、トランペットを演奏する際には唇にテンションがかかった状態を再現する必要があります。
人によって唇の形や骨格が違うので一概には言えませんが、中には特に唇には何もせずマウスピースを当てて息を吹き込めばテンションが生まれる人もいれば、ほんの僅かだけ唇を引き締めて薄くした状態でマウスピースを当てるなど、自分からテンションを作る人など様々です。
繊細な部分となりますので、可能であればトランペット演奏に慣れている方や有識者に見てもらうことをオススメします。
③唇の隙間(アパチュア)の状態
最後に解説するのは、息の通り道として唇とマウスピースの境界線に位置する唇の隙間についてです。
ここはアパチュアと呼ばれ、フランス語で「河口」という意味を持ちます。その名の通り息という水流がマウスピースに流れ込む場所です。
息の通り道としては最も細い場所になるので、ここでは息のスピードがぐっと上がります。
イメージは水が出ているホースの先端です。ここを摘まむ(狭く、細くする)と、水流が一気に速くなり遠くまで飛んでいきますよね。息にも全く同じ現象が起きます。
②の唇のテンションが上がるだけでは振動を生み出すには十分ではなく、このアパチュアで加速する息のエネルギーをプラスすることで初めて速く細かい振動が生み出されます。
またトランペットや管を真っすぐに引き延ばすとおおよそ1.4メートルくらいになります。1.4メートルのパイプの端から端まで息を通すことを考えると、結構なエネルギーが必要になると思いませんか?
そのために細く狭くなるアパチュアで息を加速させる必要があるのです。
大事なのは要素のバランス
今回はトランペットを含む金管楽器の音が出る仕組みと、効率の良い振動の生み出し方について解説をしました。
改めて今回の内容をまとめてみましょう。
- 金管楽器はリップリードと呼ばれる仕組みで音が出る。
- リップリードは唇が振動体となり、楽器本体と共鳴することで発音される。
- 唇を振動させるためには息が流れることが大事。
- リラックスした呼吸
- 程良いテンションの唇
- 唇の隙間(アパチュア)の状態
特に振動を効率よく生み出すために必要な要素の部分は、どれか一つが欠けてしまったり、また一つだけが突出してしまっても良い結果が生まれません。
例えば呼吸はリラックスできているのに唇のテンションが低すぎて上手く振動しなかったり、アパチュアが狭すぎてしまうと息が外に出ていきにくくなってしまうなど、演奏に不都合が起きてしまいます。
3つの要素がバランス良く噛み合うことで初めて、金管楽器のポテンシャルが最大限引き出されますので、私たち金管楽器奏者は日々の練習でこれらのバランスを取るべく努力を重ねているのです。
初心者の方にとっては楽器の仕組みを知る機会に、金管楽器の演奏に慣れてきた方にとっては、改めて自分が音を出している時の状態について見直す良い機会になればと思います。
今回はここまで、それではまた!
トランペットの音の源泉とも言える振動、バズィング練習について書いている記事です。